年中行事の菓子−日本と中国の比較研究Ⅰ−

北海道文教大学 研究紀要 第33号 -2009年3月-

荒井 三津子・云 肖梅

Abstract: This study investigates and compares the confectionery of annual events in Japan and China. Most of traditional annual events are common in the two countries. However, various differences of confectioneries between the two countries were observed in ingredient, shape and color, due to the climate and agricultural products. Chinese confectioneries, which mostly made from flour, have more variety and come in vivid colors and interesting shapes. In addition, Chinese people prefer to eat special confectioneries that have a similar pronunciation to a fortunate thing, wishing for something good to happen. Chinese people also celebrate annual events and enjoy traditional confectioneries with their family more than Japanese

Ⅰ.緒言 日本の生活文化は様々な形で中国の影響を受けてきた。橋本(2001)は箸の歴史と伝来について詳しく報告し1)、田中(1987)は、武士道や茶道の形成にも中国の思想や様式が果たした役割が大きいことを指摘している2)。伊藤(1998)は日本の五節句の行事が中国からの導入後、独自の変容を遂げたことを報告している3)。本稿は中国と日本の現在の年中行事における菓子に注目し、その実情と解釈の変化、背景にある風土や思想を比較検討する。行事における菓子は実際に食べるだけでなく、供え物として、また贈答用としても文化的意義が凝縮している。中国の年中行事は元々農耕生活に応じる陰陽暦法に基づくものである4)。田中(1987)は中国の多くの風習や迷信が歴史的な故事、宗教、神仙妖怪、単なる語呂合わせなどから生まれ、それらが年中行事を作りあげたこと、さらに食を大切にする国であるからこそ、年中行事には食関係のものが伴われていると指摘しているが5)、行事に用いる菓子にもその思想が反映していることが考えられる。日本と中国の菓子を比較した研究は大田(2006)が詳しいが、ここでは年中行事に視点を定め、両国の生活様式、歳時に関する認識、社会生活の変化も視野に、菓の変遷について慎重に議論を展開したい。

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